日本版と北米版の主な違い

 このページでは実際に北米版を遊んでみて、「これは日本版と大きく違うな」と感じた点について述べていく。

サブタイトル、パッケージ、解説書

サブタイトル

 まず北米版のタクティクスオウガは、サブタイトルが日本版とは違う。北米版は「運命の輪」ではなく、1995年にSFCで発売されたオリジナルと同じ、「Let Us Cling Together」のままになっている。「運命の輪」のニュアンスを伝えづらいと判断されて、オリジナルから変更されなかったのだろうか?

黒タイツ

 またパッケージイラストのオリビアが、生足から黒タイツ着用に変更されている。元のイラストではパンツをはいているようには見えなかったのが原因で修正されたか?しかしデネブなど他の女性キャラのイラストには変更がないようだ。

解説書

 解説書はもちろん全ページ英語。しかしこれは、日本版をひと通り遊んだ人ならば読まなくても大丈夫だろう(細かい字でビッシリと書かれているため、実際のところ真面目に読もうという気分にならない解説書ではある)。

決定ボタンとキャンセルボタン

 日本版では決定は○ボタン、キャンセルは×ボタンだが、北米版は決定が×ボタン、キャンセルは○ボタンになっている。これはタクティクスオウガに限ったことではなく、米国のゲームは普通はこういう仕様になっているようだ(これまで北米版のGTA:LCSやゴッド・オブ・ウォーも遊んだが、いずれもそうだった)。初めて北米仕様のゲームを遊ぶ人は戸惑う部分だと思う。ボタン配置の変更ができないのが惜しまれる。

名前の入力文字数制限

 日本版では平仮名、片仮名、漢字、英数字、記号の各種が名前に使用できたが、当然北米版では平仮名、片仮名、漢字は使えない。また入力できる文字数に関しては、日本版は最大8文字だったのに対し、北米版は最大12文字にまで増えている。なおゲーム中に使用されているフォントについても、アイテム名や台詞に使われる英数字のフォントは日本版とは違うようだ。

スキルなど名称の変更や表現の変更

 日本版と北米版とでは細かなところで結構違いがある。例えばステータス画面に見る民族・所属部隊の表現も違っている。日本版では「ウォルスタ人」などの民族名は「RACE」だったが、北米版では「CLAN(=氏族、一族、派)」に変更されている。また所属組織を表す「UNION」については、「ALLEGIANCE(=君主・祖国への忠義や忠誠)」という単語に変更されている。ちなみにデニムの名前も、北米版では「DENAM(デナム)」に変更されている。

 スキルや魔法に関しては、名称がほぼ同じものとまったく違うものとで分かれており、日本版を遊んだことがある人でもこれは戸惑う。例えば暗黒魔法の「ペトロバースト」であれば、北米版でも「Petriburst」とほぼ同じでひと目で分かるが、「スロウムーブ」は北米版では「Torpor(=無気力)」という名称であり、日本版の名称でそのまま「Slow Move」となっているわけではない点に注意したい。この手の名称の変更は結構数が多く、慣れるまでは少し苦労する。

スキルをセットするときの操作性

 例えばあるユニットが物理攻撃力UPのⅠとⅡを覚えていたとする。日本版では物理攻撃力UPⅠをⅡに変えようとしたとき、スキル選択欄が一番上から始まるのに対し、北米版は物理攻撃力UPⅠの場所から始まる。つまり北米版では、ⅠからⅡへ変えるときは、1回下ボタンを押せばいいだけなのだ。同じスキルであれば日本版と違って、何回も選択欄をスクロールさせて目的のスキルを探すような手間はかからない。地味な改良が確認できる。

スキルランクの経験値上昇具合

 細かく調べたわけではないが、一部のアクションに関する経験値ついては上がっているのは確認している。例えば日本版の場合、弩の攻撃が命中すると弩のスキルに経験値が0.7加算されたが、北米版では1.3になっていた。つまり単純に計算しておよそ2倍のスピードでレベルアップできるという仕組みになったようだ。ただ、近接戦武器のスキルや属性補正スキル、またスティールなどのアクション系のスキルの経験値には変更がないように思う。

レベルアップボーナス

 日本版の戦闘バランスがかなりヌルくなっていた原因とも言える要素だが、北米版では極端にボーナス値が減らされ、ベースパラメータがそう簡単には増えないようになった。実際に日本版と北米版とを比べてみるとよく分かる。デニムをウォリアーのみでレベルを10まで上げたものとで比較してみる。

 まず日本版だが、ウォリアーのレベルが1から10に上がったことでデニムのベースパラメータが全部4上昇しているのが確認できる。レベルが1上がるごとにベースパラメータはすべて0.5ずつ上がるとのことなので、詳細には9レベル分で4.5上がっている。ベースパラメータのカンストも楽勝なのが日本版だった。

 続いて北米版だが、日本版と同じくデニムをウォリアーでレベル10まで上げたところで、ベースパラメータは1しか上昇していないのが確認できる。このため極端なレベル上げをせずに普通にゲームをプレイした場合、味方ユニットと敵ユニットの力の差が日本版より開きにくく、日本版よりも緊張感のある戦いが楽しめるようになった。ということは、店で雇うことができる一般キャラクターはベースパラメータの初期値がだいたい35前後ということを考えると、オール100にして呪われた武具の材料に…なんてところまで育てるのは、途方もない時間と手間がかかりそうだ。

エキストラバトルの出撃数と経験値

 主にレベル上げに使うことになるエキストラバトルでは、一部マップでの出撃数が増えて、獲得できる経験値も増えた。例えばタインマウスの丘やゴルボルザ平原では、日本版だとプレイヤー側は6人までしかユニットを出撃させることができなかったが、北米版では7人に変更されている。

 また経験値については、例えばタインマウスの丘の場合で言うと日本版では敵を全滅させて400〜600程度の経験値を獲得できたのに対し、北米版ではおよそ800もの経験値を獲得できるようになっている。このため一度に育成できる人数が増えただけでなく、ユニットのレベル上げが日本版より若干楽になった。

アイテム合成の成功確率と必要個数

 日本版よりもずっと成功確率が高い。例えば上の画像ではバルダーインゴットの合成成功確率が94〜99%となっているが、これは前項のレベル10のときのデニムのベースパラメータでの成功確率なのだ(アイテム合成の成功確率は自軍ユニットのベースパラメータが関係している)。日本版をひと通り遊んだ人であれば、デニムのベースパラメータが40にも到達していない時期にバルダーインゴットの成功確率がここまで高いのは驚くことだろう。この他にも、合成素材は軒並み成功確率が高まっている。

 武器や防具に関しても日本版に比べれば成功確率は全体的に高いものの、やはり強力なものはやや低めにおさえられている(それでも10%とか20%とか、極端に低いものは見られなかった。低いものでも30〜40%ぐらい)。

 また各種鉱石を合成で造るさいの雑鉱石の必要個数が、一部のものに関しては必要個数が減っている。例えば魔鉱石(Baldur Ore)は日本版では造るのに雑鉱石を3個必要としていたが、北米版では2個に減った。また魔水晶の原石(Krystallos Ore)は日本版では魔鉱石を2個必要としていたが北米版では1個だけで造れるようになった。細かく調べれば他の必要個数も変更されているかもしれない。

 合成に必要な雑鉱石の数が減ったのはいいのだが、結局のところまとめて造ることはできないため、日本版と同じく手間がかかることにはかわりがないのが残念だ。

謎補正武器

 日本版ではダメージに大きな補正がかかる武器が存在していた。北米版ではこの謎補正が削除されたのか、日本版のような不可解な武器は見られない。

AI

 日本版では延々とアタッチ系などの補助魔法をかけあったり、こちらに近づいてきたかと思えば目の前でキュアリーフを使ってHPを25回復したりと、その行動にはイライラしっぱなしの敵AIだったが、北米版では補助魔法を習得している敵が極端に少なく、戦闘中に敵が補助魔法を使う場面はほとんど見られなくなった(逆に補助魔法を習得している敵は補助魔法をずっと使い続ける。つまりAIを根本から改善したというよりは、ユニットごとの所持魔法を削除しただけ)。これにより魔法使い系のユニットは各種攻撃魔法やパラライズといったステータス異常を付加する魔法を積極的に使ってくるようになり、日本版よりは攻撃が激しくなっている。
 キュアリーフに関しては相変わらず消耗品使用Ⅰ〜Ⅳのスキルがセットされていない敵が多く、ボスユニットでさえも瀕死のユニットにキュアリーフを使用という様子が終盤も見られ、この点に関しては改良がない。

 味方のAIに関しては、日本版ではユニットがアイテムとして使用すると○○アタッチもしくは○○ガードの効果が発動する武具(例えばジィルガの弓、フウェイルの水鎧など)を装備していた場合、攻撃できる敵がいないときはこれらのアイテムを使用する様子が多く見られた。しかし北米版ではこの○○アタッチもしくは○○ガードの効果が発動する武具を装備していても、使用する様子が見られない。ただし、ジィルガの魔手のように、敵に対して何らかの効果をもたらす武具に関しては使用する様子が見られた。詳しく調べていないのでハッキリとは言えないが、この点に関してはAIの行動ルーチンに若干の変更が加わっているように思う。

 全体的に見れば後衛に位置する敵が積極的に攻撃をしかけるようになってきたのに加え、敵ユニットが後ろに下がり続けてモタモタしているという消極的な行動はほとんど見かけないようになったのは良い点だと思う。またベースパラメータがなかなか上昇しないため、よほど強力な武器を装備したり大きなレベル差がなければ、ゴリ押しで進めるというのは難しくなっている。個人的には日本版がヌルすぎて物足りなかったので、やっと少しはまともになった印象を受ける。

北米版のバグ

 北米版では、ステータス画面で見るトマホークとフランキスカのグラフィックが逆になっている。しかし北米版の戦闘でいざトマホークを使ってみると、投げられたトマホークのグラフィックはフランキスカに、またフランキスカを戦闘中に投げると表示されるグラフィックはトマホークになってしまう(それぞれの+1でも同じ現象が起こる)。つまりステータス画面のグラフィックは変更されたが、戦闘中のグラフィックは日本版と同じという状態になっている。

 これはどう取ればいいのか、よく分からない。ステータス画面に見るグラフィックの指定が正しいとするならば、戦闘中のグラフィック指定を変更し忘れたと考えられる。しかしステータス画面に見るグラフィック指定が日本版と逆であること自体が、移植作業の間に起こったミス、という可能性も捨てきれない。致命的なバグではないし、ゲーム進行にもそれほど大きな問題を起こすことでもないのだが、若干のモヤモヤ感が残る。

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