俺とときメモ

 このページではまず、僕がなぜ『ときめきメモリアル(以下ときメモ)』を知ったのか、そのきっかけや、またなぜ現在に至るまでときメモが好きなゲームのひとつであるのかを、自分自身を振り返りながら語ってみようと思う。

きっかけはファミコン通信

 僕がときメモの存在を知ったのは、発売からしばらくしてのことだ。PCエンジン版のときメモが発売された当時、PCエンジンの専門誌は『PCエンジンFAN』や『電撃PCエンジン』など、詳しくは覚えていないがいくつかあったと思うのだが、PCエンジンを持ってはいたものの、これら専門誌を特にチェックすることはなかった僕は、『月刊ファミコン通信攻略スペシャル』という雑誌で、ときメモを知ることになる。
 この雑誌は現在のファミ通がその昔発売していた、ゲーム攻略記事のみに特化した増刊号のようなもので、その記事のひとつのなかに、『もりけんのPCエンジン向上委員会』という毎月たった2ページだけの小さなコーナーがあった。このコーナーの中でライターの森岡憲一氏がやたらとときメモをプッシュしており、これをきっかけに、ときメモがどういうゲームなのか、を知ったのだった(下の画像がそのページ)。

PCエンジン向上委員会

 例えば1994年9月号では、『誕生VSときめきメモリアル』という内容で誕生(アイドル育成シミュレーションゲーム)とときメモ、それぞれの面でどちらが優れているか、という比較記事が掲載されている。今こんなことをやったら、それこそコナミから消されそうな気配すら感じるが、当時は穏やかだったのだろう、グラフィックは誕生の勝ち!イベント数はときメモの勝ち!という風に優劣を決めている。また同号では別ページにてときメモのイベント攻略の記事もあり、これらの記事を読んで強い興味を持ち、ときメモを買うことにした。
 しかし当時はそれこそ美少女ゲーム(当時はギャルゲーという単語はなかった)なんていうのは特にヤバイというか、ある種おかしな方向に極めちゃってるっぽい印象のあるジャンルという認識があった僕は、それこそエロ本を買うかのような覚悟でゲームショップの店員さんに、ショーケースの中に残りひとつ飾られていたときメモを指差し、「これください」と頼んだ覚えがある。これは当時、PCエンジンにはパソコンのエロゲー、例えばドラゴンナイトなどが移植されていたこともあってか、PCエンジン=エロという印象もあったし、なにより女子高生が堂々と描かれているということから、どことなく恥ずかしいという気分が強かったのは確かだ。今考えてみればなんともウブというかそれこそ恥ずかしい話なのだが、家庭用ゲーム機に健全な(?)恋愛シミュレーションゲームというのはまだ珍しい時代でもあったから、僕自身、まだこのジャンルに対して理解がなかったということはあるだろう。

実際にプレイ

 エロ本を買うような緊張をなんとか乗り越え、無事手に入れたときメモなのだが、しばらくはこのゲームに随分とはまったものだった。キャラクターのフルボイスもさることながら、次々に起こるイベントの多さ、そして女の子たちの豊かな反応……PCエンジンの読み込みの遅さでイラつくことはあっても、ゲーム自体の完成度の高さにとにかく驚いた。
 今でもはっきりと覚えているが、初めてプレイしたときは恋愛シミュレーションというジャンルを完全に舐めきっていた僕は、「まぁテキトーにやってればクリアできるでしょ」とばかりに本作のスーパーヒロインである藤崎詩織に無謀にも挑戦、パラメーター上げまくり→女の子登場しまくり→爆弾発生しまくり→爆弾連鎖しまくり→バッドエンドという、おそらく誰しもが経験したであろう爆弾コンボで見事なまでに玉砕した。恥ずかしい話なのだが、このときまだいまいちシステムを把握できていなかった僕は、今度こそはとまたしても藤崎詩織に挑戦、結局2周目もほとんど同じような展開に陥り、バッドエンドを立て続けに2回見るハメになってしまったのだった。さすがに2回も同じような失敗が続くと仕組みもだいたい頭に入ってくるもので、3回目は「誰といつデートしたか」というメモを取りながらプレイしてみたところ、卒業式で紐緒結奈閣下が登場、初めてハッピーエンドを迎えることができたのだった。実のところ狙っていたわけではなかった予期せぬエンディングなのだが、これをきっかけに紐緒結奈閣下がときメモのキャラのなかで一番好きになった。他機種版も含め、間違いなく一番多く繰り返しクリアしているのは紐緒結奈閣下だろう。

 さて一度クリアしてなんとなくコツがつかめたら、あとは簡単だった。続けて片桐彩子、清川望、藤崎詩織と、スイスイとクリアしていった。しかしやはり繰り返しのプレイとなると作業感も強くなってくる上に、PCエンジンのロードの遅さもあいまって、わりとすぐに飽きてしまったように記憶している。クリア後のフリートーク聴きたさに我慢してプレイしようかとも思ったこともあったが、それの気持ちを折ってしまうほどにPCエンジンのロードは遅く、私生活の忙しさもあいまっていつしかプレイしなくなってしまったのだった。

次世代機登場と移植

 94年の11月にセガサターンが発売され、12月にはプレイステーションが発売された。そしてその直後ぐらいだったと思うのだが、早々とときメモはプレイステーションへの移植が発表されたと思う。購入から数ヶ月、すでにプレイしなくなってはいたものの、この移植決定の記事を読んで、「次世代機ならロードも速くなるかなぁ」などとワクワクしたものだった。このとき、いつの間にやらときメモは一部のユーザーだけの極地的な人気ではなく、幅広くゲームファンに認知されるような作品になっていたらしく、各雑誌で大々的に取り上げられていたと思う。多分、一番最初に移植されたPS版が、ときメモの絶頂期だったんじゃないかなぁ。当然僕もPS版は買った。ただし、オルゴール付きの限定版ではなく、通常版なのだけど。やはりこのときもまだときメモ…というか、美少女ゲームは恥ずかしいという意識が強く、予約を入れなければ買えなかった限定版を店で頼むこと自体に強く抵抗があった。ちなみにこのPS版、当然一番最初にクリアしたのは紐緒結奈閣下であることは言うまでもない。

 さてPS版以降、プライベートコレクションやらSFC版、SS版なども発売され、途中からは惰性で買っていたような気がするが、なんだかんだと2、3年ぐらいはときメモのファンであったように思う。しかしながら僕が当時ときメモ関連で買っていたのは言わば本編と言えるゲームが中心で、ぱずるだまやドラマシリーズといった派生モノ、ドラマCD関連は買っていなかった。
 単純にまだ学生でシリーズをすべてそろえられるほどお金がなかったというのも大きいが、「とりあえずときメモキャラ出しとけ」的なぱずるだまには嫌悪感を感じたし、作画が小倉雅史氏の特徴をとらえきれていないドラマシリーズに関しては、「こんなもんときメモじゃない、パチモンだ!」という意地で買わなかった。まぁ今となってはつまらない意地だな、とは思う。いずれオークションか何かで買おうかなとは思うが、当時はドラマシリーズの絵自体が許せなかった。

ときメモ熱再び

 僕が記憶している限りでは90年代に最後に買ったときメモはSS版。それ以降は本当にときメモに触れることもなく過ごした日々が続いた。ときメモの続編が出ていたのは知っていたが、「あ、そう。ふ〜ん」といった程度で、まったく興味も出なかった。ガールズサイドが出たときには、「まだときメモなんてあったのか」といった驚きを感じたくらいで、ときめきメモリアルというブランドがいまだ続いていたということが信じられなかったくらい、ときメモという存在を忘れていた。

 しかし2006年頃だっただろうか、何気に部屋を片付けていたら、PCエンジンのときめきメモリアルを押入れで発見してしまったのだ。懐かしいなぁなどと思いつつ、だいぶ動かしてなかったPCエンジンを試しに起動させてみたところ、見事動く。しかも天の声バンクの中身も健在。ビバ!NEC!昔懐かしのオープニングと声優さんのフリートークが、10年ぶりほどに心のスイッチを入れてしまった。相変わらず途中で故障したかと勘違いするほど長いロードにムカツキつつも、「初めてクリアできたキャラ」である紐緒結奈閣下を攻略、「ああ、ときメモって面白いなぁ」と、改めて実感したのだった。
 またYouTubeでときメモで検索したら当時のライブ映像が観れたというのも大きい。「ああ、こんなイベントあったんだ」という、自分の知らなかったときメモを見れたのは嬉しかった。声優さんたちが生でドラマを演じるとか、僕も見たかったなぁ…。

 そして学生当時は高くて買えなかったときメモ関連のCDをネットで買い漁ることになる。もう発売から10年も経つようなCDばかりだが、ネットで検索するとある程度の情報は得られるので、自分がほしい曲が収録されたCD(主に紐緒結奈役の中友子さんの歌が収録されているCD)を次々に注文。中古だったり、オークションだったりするので、1枚数百円で済むのがありがたい。この過程の中で『ときめきの放課後』の存在を知り、また紐緒結奈閣下の次に好きな片桐彩子役の川口雅代さんのCDも購入。「そっかー、10年も前にこんなもんがあったのかー」と思いながら、再びときメモにハマるのだった。

まとめ

 こう概観してみてみると、僕がときメモにハマった理由というのはゲームのデキもさることながら、魅力的なキャラクター、もっと細かく言えば演ずる声優さんを好きになれたというのも大きかったんだと思う。正直なところ、SS版はフリートークが聴きたくてプレイしていたという面も否定できないし。
 今考えてみると、ときメモの声優さんって、舞台女優だったり、アニメよりはナレーション、洋画の吹き替えといった方面で活動していた人が大部分だったのが、新鮮だったのかもしれない。有名どころをキャスティングするのではなく、あまり知られていないけど実力派、とか、それこそ川口雅代さんの起用なんてもはやひとつの奇跡としか思えない。このキャスティングの妙というのが、ときメモの面白さのひとつであり、今でも好きなところかなと思う。

 現在ではケータイのアプリでも遊べるらしいんだけど、僕としてはぜひ声が出るメディアのときメモで遊んでほしいな、と思う。その方が絶対、強く印象に残るんじゃないだろうか。きしくも2009年、初代ときメモとときメモ2がアーカイブス化、そして最新作の4が発売と、なんだかときメモが再び復活したかのような年でもある。僕は初代のときメモしかしらない身だが、それでもこれからもときメモシリーズは続いていってほしいなぁと思うし、できれば初代のリメイクというのも見てみたい。そんなささやかな願いを込めながら、このコンテンツを作ったのだった。

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