PS版幻のシナリオ

 SS版の完結編同様、PS版の完結編にも作りかけのまま放置された没シナリオマップがいくつか存在する。スクリーンショットを交えながら、没になってしまったシナリオがどういうものだったのか、調べてみることにしよう。

PS版の没マップあれこれ

没マップ1

没マップ2

 「逆襲のシャア」「究極という名のガンダム」はSS版と同じく、タイトルが用意されているだけで仮のマップデータが置かれているのみ。画像左下の「ファイナル・オペレーション」は正確には「ファイナル・オペレーション〜前編〜」というものだが、これもやはり仮のマップデータが置かれているだけだ。SS版と微妙に違うのは、ハングアップすることなくカーソルを動かせたり、「はるけき彼方で」のBGMが流れているところ。ちなみに「フェイズ終了」を選んでしまうとクリア扱いとなり、インターミッションに入ってしまう。

 画像右下の「ファイナル・オペレーション」は正確には「ファイナル・オペレーション〜完結編〜」。やはりSS版にもあった没マップだが、タイトルコールまでは動作するものの、その後フリーズし、画面がブラックアウトしてしまって内容を確かめることはできなかった(当サイトのBBSに、このマップをプレイできたとの情報が寄せられているので、環境によってはプレイできるのかも)。

ファイナル・オペレーション〜完結編〜

 シナリオ名については、SS版同様セーブデータでも確認できる。実際に遊ぶことができる「ファイナル・オペレーション−完結−」とは、やはり微妙に違うのだ。

野望の果てに

 没シナリオマップ…というよりは、没タイトルというべきなのか、なぜか「野望の果てに」の前後編バージョンのタイトルも存在する(SS版にもある)。ただこのシナリオは、内容自体は「うずまく悪意(前・後)」と同じ内容であり、個別のマップデータは用意されていない。開発初期のシナリオ構想では「異質なるモノへの挽歌」はなく、「野望の果てに」の前後編でジャミトフとドレイクとの決戦を描く予定だったのかもしれない。

ファイナル・オペレーション〜後編〜

ファイナル・オペレーション〜後編〜1

 没マップの中でもまともにプレイできるのが、「ファイナル・オペレーション〜後編〜」。SS版にも存在し、その内容に少し触れたが、PS版でも特に違いはないようだ。

ファイナル・オペレーション〜後編〜2

 内容的にはアクシズ内部でヴァルシオン(シロッコ)と戦うというシナリオになっている。ヴァルシオン以外の敵は、人工知能改(レベル56)が乗ったジ・Oが4機。SS版同様、パイロットの顔グラフィックと台詞の内容にズレが生じており、調整することなく放置されている。またこのマップでは、イデオンやガンバスターといった大型のユニットを出撃させることができるほか、エヴァシリーズはケーブル無しで出撃させることができる。

ファイナル・オペレーション〜後編〜3

 自軍の出撃できる数が7機までと少なく、ヴァルシオンと複数のジ・Oを相手にするには少々厳しいようにも感じられるが、ヴァルシオンに乗っているシロッコには挑発が効くため、ヴァルシオンだけをこちらに誘き出し、ボコボコにすることが可能だったりする。ヴァルシオンを撃墜すればお供のジ・Oは消えるので、わざわざ初期配置の敵を全滅させる必要はなく、ヴァルシオンを倒すということだけにまとを絞れば、特別難しいマップではない。

 なおカミーユとシロッコが戦闘になると会話イベントが発生するほか、ヴァルシオンを倒したあとはアクシズの自爆カウントダウンが始まり、5ターン以内にアクシズから脱出しなければならないというイベントが発生する。それにしてもアナウンスの「自爆装置の安全装置」という一文は文章としてどこかくどい。

ファイナル・オペレーション〜後編〜4

 アクシズの自爆装置が起動するとプレイヤーフェイズの開始時に「自爆まであと○分」とアナウンスが表示され、アクシズの入り口でユニットを待機させるとアクシズから脱出したことになる。ただやはりこのマップは未調整のまま放置されてしまっているせいか、カウントダウンの数値がなぜかターン経過と共に増えたり(最初は自爆まであと2分と表示されるが、その後3分、4分となぜか時間が増えていく)、最終的には脱出しようがしまいが強制的にマップクリアとなり、「制限時間内に脱出できなかったのでゲームオーバー」という結末が用意されていない。ちなみにカウントダウンが始まったあともカミーユとシロッコの会話があるので、シロッコとの最終決戦はアクシズから脱出したあと、改めておこなう予定だったのかもしれない。

イベントログ

 以下に、没になった「ファイナル・オペレーション〜後編〜」のイベントログを掲載しておく(なお台詞の順番と改行はゲーム中の表示に従っている)。

■シナリオ開始時

ブライト「レディ=アン少佐はどうだった?」

シロッコ「それにしてはいい出来だ。
これならば貴様らなど敵ではない!」

リューネ「…あんた、性格変わったんじゃない?
なんか前にもまして得体のしれない邪悪さを感じるよ」

シロッコ「ふふふふふ…さて、どうかな?
どう変わったかなど私には意味のないことだからな。
では…まいる!」

アムロ「ヴァルシオン!? たしかに倒したはず…」

シロッコ「ルナツーに隠されていたものを拝借してきたの
だよ。ジャミトフもいいものを残してくれたものだ」

アムロ「そうか…それでジャミトフは宇宙に上がろうと
していたのか… そしてDCもルナツーを攻略しようと
していた…」

シロッコ「これはよいマシーンだ。これならば貴様らなど
敵ではない! 叩き潰してくれる!」

アムロ「なんだ、この不快な感触は…以前のシロッコとは
あきらかに異なるプレッシャーだ…」

カミーユ「シロッコ! 貴様はルナツーで死んだはだ!」

ファイナル・オペレーション〜後編〜5

シロッコ「すると私は幽霊ということになるな。
だが、こうしてちゃんと足はついているぞ」

カミーユ「ふざけるなっ! お前がここにいるということは
あれは偽者だったということか!?」

シロッコ「偽者か…たしかにそうとも言えるな。
肉体の構成はまったく同一であるが、
本物でないことはたしかだな…」

カミーユ「!? まさか、クローン…」

シロッコ「そう。あれは私の意志で造りあげた
私自身のクローン…まあ、欠陥品であったがな」

アムロ「お前が本物というワケか…」

シロッコ「くくくく…本物…ふふふふふ」

カミーユ「何がおかしい!?」

シロッコ「…シャピロも余計なことをしてくれたものだ。
最後の最後に真実を教えるとはな…」

カミーユ「真実…?
どういうことだ、シロッコ!?」

シロッコ「ふふふ、さて、おしゃべりはここまでだ」

■シナリオ開始時(リューネが出撃している場合)

ブライト「レディ=アン少佐はどうだった?」

ギャリソン「精神的にかなりまいっていたようですが、
先程、地球への帰路につきました」

万丈「辛いだろうな。しかし、我々はやらなければならない
ことがある。ここで立ち止まることはできない」

シロッコ「…ロンド=ベルか…」

リューネ「あーっ! あんたソレ、おやじのヴァルシオン
じゃない! 窃盗は立派な犯罪よ! 今すぐ返せば、
警察沙汰だけにはしないであげるわ」

シロッコ「リューネ=ゾルダーク… 道化を演じようと
しても無駄だ。私はそのような手にはのらんよ」

リューネ「ちぇっ! 少しは油断させれると
思ったのに…まぁいいや。
それより、あんたどこからソレを掘り出してきたのよ?」

シロッコ「ルナツーに隠されていたものを拝借してきたのだ。
ジャミトフもいいモノを残してくれたものだ」

リューネ「なるほどねぇ…たぶん設計図をもとに
再建造したのね…まったくよくやるわ」

アムロ「そうか…それでジャミトフは宇宙に上がろうと
していたのか… そしてDCもルナツーを攻略しようと
していた…」

シロッコ「これはよいマシーンだ。これならば貴様らなど
敵ではない! 叩き潰してくれる!」

アムロ「なんだ、この不快な感触は…以前のシロッコとは
あきらかに異なるプレッシャーだ…」

カミーユ「シロッコ! 貴様はルナツーで死んだはだ!」

シロッコ「すると私は幽霊ということになるな。
だが、こうしてちゃんと足はついているぞ」

カミーユ「ふざけるなっ! お前がここにいるということは
あれは偽者だったということか!?」

シロッコ「偽者か…たしかにそうとも言えるな。
肉体の構成はまったく同一であるが、
本物でないことはたしかだな…」

カミーユ「!? まさか、クローン…」

シロッコ「そう。あれは私の意志で造りあげた
私自身のクローン…まあ、欠陥品であったがな」

アムロ「お前が本物というワケか…」

シロッコ「くくくく…本物…ふふふふふ」

カミーユ「何がおかしい!?」

シロッコ「…シャピロも余計なことをしてくれたものだ。
最後の最後に真実を教えるとはな…」

カミーユ「真実…?
どういうことだ、シロッコ!?」

シロッコ「ふふふ、さて、おしゃべりはここまでだ」

■カミーユとシロッコが戦闘になったときの会話イベント

カミーユ「シロッコ! いったい何を考えている!?」

シロッコ「くくくく…この行動は後世へ語り継がれる。
そして私の名は人々の記憶に残るだろう。
ふふふふ…ははははははっ!」

カミーユ「シロッコ…!」

カミーユ「シロッコ! もう逃しはしない!」

■アクシズの自爆装置起動後

シロッコ「そうだ。もっと憎め。そして、私の名を
その心に刻み込むがいい!」

カミーユ「ああ、それが望みならそうしてやる!
そして、俺はお前を…倒す!」

シロッコ「なかなかやるな。だが、ここで終わらすワケには
いかんのだ。せいぜい頑張って脱出することだな!」

 以上が「ファイナル・オペレーション〜後編〜」のイベント内容だが、リューネが出撃しているかどうかでイベントの流れが一部変化する。リューネが出撃している場合はレディ=アンが精神的なダメージを負ったまま地球へ帰ったということが分かるが、おそらくこのシナリオ前にトレーズが何らかの形で死んでいるのではないかと推察される。なおクリア後のインターミッションでは、このシナリオが「ファイナル・オペレーション〜後編〜」の名称で登録されているのが確認できる。

ファイナル・オペレーション〜後編〜6

 余談になるがシロッコの「すると私は幽霊ということになるな。だが、こうしてちゃんと足はついているぞ」という台詞はちょっと面白い。幽霊に足がないという表現は日本独自の文化的表現だからだ。つまりシロッコは一見日本とは無縁の存在に見えて、実は日本の文化にも精通していたということなのだろうか。