ユニットデータを見ても分かる通り、各機体に搭載された各武器には、それぞれに地形適応が設定されている。この武器の地形適応はパイロットと機体の総合地形適応とは違い、もっとも適性があるAでもダメージへの修正倍率は1であり、大抵の武器に関しては各地形への適応がAであることから、せいぜい意識することといえば、「海に対してビーム兵器は適性がない(撃てない)」ぐらいしかないのではないかと思う。
御存知の通りF・F完結編のあとに発売されたコンプリートボックス(以下CB)はこのF・F完結編で構築されたシステムの大部分を流用して作られているが、実は密かにダメージ計算式において、F・F完結編とCBでは微妙な違いがあることが分かった。それはどういうことかというと、計算式自体は同じなのだが、「武器の地形適応」の扱いが違ったものになっているのだ。
このページではF・F完結編とCBとで武器の地形適応の扱いがどのように違うのか、画像をまじえて検証してみることにする。F・F完結編とCB、どちらも遊ぶという人には注意していただきたい。
実際に検証する前に、まずはダメージ計算式について念のため確認しておくことにする。F・F完結編とCBのダメージ計算式は、以下の計算で算出できる。
各項目の細かな意味については戦略ページを参照してほしい。さてここで注目しておきたいのは、1の計算式における「武器の地形適応」だ。ダメージ計算式においてこの項目が「A」であれば×100%、「B」であれば×70%、「C」であれば×40%が代入され、「−」となっている場合は適性なしという意味でその地形に対し攻撃ができない。分かりやすい例で言うと、ビームライフルやパワーランチャーなど、一般にビーム兵器と呼ばれる属性の武器は、海にいる敵に対して攻撃することはできない(ただしビーム兵器でも一部例外はある)。
ここで問題となるのは、F・F完結編とCBとでは、この武器の地形適応に代入するために参照される「地形」の参照先が異なる、ということだ。具体的にどうなのかというと、F・F完結編では「攻撃側のいる地形」が参照先であり、CBでは「防御側のいる地形」が参照先になっているのだ。
これが一体どういう違いを生み出しているのか、ビームライフルを例にしてみよう。上の画像はF完結編νガンダムのビームライフルだが、海中から空にいる敵をビームライフルで撃つと、ビームライフルの空の地形適応がAであるにもかかわらず、ダメージは強制的に10になってしまう(クリティカルが出れば15にはなる)。これを見るに、「じゃあ空Aとは一体どういう意味なのか」、こんがらがってこないだろうか。つまりビーム兵器が海にいる敵に対して攻撃できないという仕組みは、「敵が今いる地形で攻撃の可否が判定されている」と考えられるのに、適性があるはずの空に対してダメージが10になってしまう理屈がこれではよく分からないのだ。攻撃側の地形が海だからというのであれば、それはパイロットと機体の総合地形適応に依存すべき問題だろうし、なぜ本来「適性あり」と判断されているものがダメージ10になってしまうのだろうか。
前置きが長くなってしまったが、実際にF・F完結編とCBのダメージ計算式を改めて検証してみることにする。
F・F完結編の実験はFのシナリオ16「南海の死闘」でおこなう。レベル12のアムロ(射撃攻撃力176)をガンキャノンに乗せ、海の地形適応がBの240ミリキャノン(攻撃力1000)を使い、海中の敵に対し陸から攻撃した場合と海から攻撃した場合とでダメージを調べる。ターゲットになるのはグライア(装甲1000)だ。海の総合地形適応がCで、かつ海の地形防御効果を5%受けている(つまりダメージが5%減る)。なお、パイロットは両者ともに気力は100の状態。
まずは、陸上から海中のグライアを、240ミリキャノンで攻撃してみることにする。与えたダメージは1246。このからくりを計算式で求めると次のようになる。
計算式と一致した。つまりこれから何が分かるかというと、240ミリキャノンの武器地形適応B(70%)という数値がどこにも見当たらず、意味をなしていない、ということになる。この場合の240ミリキャノンの武器地形適応は、ガンキャノンのいる陸という判定になっているためだ。次にガンキャノンを海に沈め、同じく海中にいるグライアへと240ミリキャノンで攻撃をしてみることにする。
410というダメージが出た。これを計算式で求めると、
こちらも計算式と一致する。ガンキャノンのいる場所が海になったことで武器の地形適応もB判定の0.7になり、ダメージが大幅に下がっている。本来であれば、陸から攻撃したときに240ミリキャノンの地形適応が設定通りB判定にならなければおかしいのではないかと思う。しかしこの現象のおかげで、240ミリキャノンと同じく射撃タイプかもしくはその場を動かないで攻撃するタイプでなおかつ海への地形適応がBであるブレストファイヤーやオーラキャノンは、ユニットが陸または空にいる状態で海中の敵に攻撃した場合は、ダメージの下方修正を受けることなくダメージを与えることができてしまう。
ではもう一方のCBはどうか。CBでの実験は、第3次のシナリオ10「ソロモン沖海戦」でおこなう。攻撃するユニットはレベル12のアムロ(射撃攻撃力108)を乗せたガンキャノンで、やはり240ミリキャノン(攻撃力480)を使い、陸上から海中のグロッサムX(装甲180)を攻撃する。このグロッサムXの海の総合地形適応はBであり、第3次における海の地形防御効果はF・F完結編と同じく5%だ。なおアムロの気力は105と少し高い。それでは早速結果を見てみよう。
与えたダメージは262。雀の涙ほどのダメージだが、第3次の序盤はこんなものだ。さてこのダメージを計算式で求めてみると、次のようになる。
なぜか1の誤差が出てしまっているが、計算式1において240ミリキャノンの地形適応がF・F完結編とは違いB判定となっていることが計算式上から確認できる。つまり防御側の地形が攻撃側の武器の地形適応に参照されているのだ。これは「海中の敵に攻撃するから240ミリキャノンの地形適応は海のBだね」、という処理だ。ところがF・F完結編では「攻撃側のいる地形が攻撃側の武器の地形適応に参照されていた」ため、「海中の敵に攻撃するけど攻撃するユニットが陸にいるから240ミリキャノンの地形適応は陸のAだね」という処理になっていた、というわけだ。
このようにダメージ計算式において「防御側の地形が攻撃側の武器の地形適応に参照されるようになった」ため、CBでは海中から空の敵にビームライフルで攻撃した場合も、ちゃんとダメージが出るようになった。ビームライフルの空の地形適応Aが計算式に乗るためである。本来はF・F完結編もこうなる予定だったのではないかと思う。もっともF・F完結編の場合はそのおかげで海中に誘い出せればモビルスーツやヘビーメタルの攻撃が怖くなくなるという大きなメリットを生み出せているのも事実なのだが…。