スーパーロボット大戦Fを一生楽しむ本(ケイブンシャ)

スタッフ写真
出席者
寺田貴信氏
(写真左)
バンプレストの名プロデューサー。日夜『スーパーロボット大戦』完成のために東奔西走(本当に東京と大阪を行ったり来たり…)している。氏の努力なしにはスーパーロボットシリーズはないのだ。今回は膨大な権利関係と声優のセッティングに苦労された。
阪田雅彦氏
(写真中央)
『第2次スーパーロボット大戦』からシリーズを通して総監督を務め続けている。文字通りスーパーロボット大戦の生み親。言霊を巧みに操り、スーパーロボットファンを独自の世界へと誘導していく。今回は病と闘いながら新作をロールアウトした。
庄真宏氏
(写真右)
スーパーロボット大戦シリーズのチーフプログラマー。阪田氏とのコンビも長く、息の合った作業でハードの性能を大きく超えたプログラムを作り出す。今回は時間の都合で入る予定ではなかったカラオケモードを最後の最後で組み込んだ功労者。

阪田氏入院の真相

――今日は『スーパーロボット大戦F(以下『F』)と『完結編』について色々お聞きしたいと思います。まず、阪田さんが倒れたというお話を伺ったのですが?

阪田:倒れたというより病気になりまして(笑)。尿道結石になっちゃったんですよ。とんでもない腹痛が襲ってきて、仕事が手につかない状態だった。時間がないのでなんとかだましだましやっていたらどうしても我慢できなくなってしまって、病院に行ったんですよ。ただの風邪だろうと思ってたんですが、モルヒネ打たれて入院させられてしまったんです(笑)。で、そのときは原因不明のまま退院したんですが、痛みが治まらない。で、同じ病院に行ったら、また入院させられるだろうなと思って違う病院に行ったら、また入院させられてしまいました。その代わり原因は分かったので無事に治りました。

寺田:あの頃やった阪田さんのインタビュー写真むちゃくちゃ顔色悪かったんですよ。怖くって。超合金みたいな顔になってるんだもん(笑)。

――『F』の制作期間は実際どのくらいだったんですか?

阪田:あるだろうという仮定での作業開始は魔装機神が終わってからなんで割と早かったんですよ。ただ、そのときはどういう形になるかわからなくて、登場キャラクターたちが決まりはじめたのが去年の6月ぐらい。本格的に動き始めたのは11月か12月ぐらいです。

寺田:まぁ、それ以前もちょこちょこ動いてはいたんですけど、実際はそれぐらいですね。

――今回はゲームバランスが絶妙な印象ですね。ちょっと手強めだけれど、がんばれば倒せる。

阪田:今回は自分でプレイできる時間が多く取れたんで、自分や人のプレイを見て、調整ができたんですね。前より多少良くなったかなと思ってますが、人によっては難しいと思うかもしれませんね。

寺田:今回は『第4次』とは違う作品なんですが、『第4次』に引きずられている人にはちょっと難しく感じるようですね。

――寺田さんの作業の方は?

寺田:私が動いたのは正月ぐらいからなんですが、声だけは『新スーパーロボット大戦』のときから録っていたんですよ。声優さんがたくさんいらっしゃったので、ついでに色々と録っておきましょうと。…あれ、どういう目的で録ってたんでしたっけ?

阪田:だから、おそらく使うんじゃないかなという予想のもとに(笑)。

寺田:いつのことやらとは思ってやってましたが(笑)。ということですので、随分前からやってたんですね。

――寺田さんの作業は?

寺田:ウィンキーさんのサポートと対外的な交渉ですとか、とにかくなんでもやりますね。

阪田:著作権関係とか、いつも大変だなと思うんですよ。あと今回なんかは声優さん関係が(笑)。

ボイス収録はイバラの道だった!?

――声優さんの収録はどんな感じでしたか?

寺田:今までのセリフは同じようなものが多かったんです。しかし、今回はキャラクターの特色を生かしたセリフをということで阪田さんも、色々考えてましたね。いつもは収録前に全部のセリフが上がってたんですが、今回は「このキャラクターが決まったんで、その人のセリフを書いて下さい!」という自転車操業的な感じでしたね。収録直前にノートパソコンでセリフを書いていたときもありましたね。

――収録はどのくらいの期間かかったんですか?

寺田:実際メインで録ったのは3月から2、3ヵ月の間ですね。

――もっぱら作業は寺田さんが?

寺田:ええ、阪田さんがシナリオを書いて、私が「よくこんなとこ引っ張ってくんなぁ」とか言いながら(笑)、LDを編集して御本人にお見せして収録。それに阪田さんがオッケーを出してくれるという流れですね。一番忙しいときで20日連続。それも録ったあとにチェックがあるんで、阪田さんも大阪と東京を行ったり来たりという忙しさでしたね。特に辛かったのがトッド=ギネスが見つかるまで。

――あの方は今声優さんをやってるんですか?

寺田:やってないんです。カラオケの先生をやられているらしいです。見つかるまでに半年ぐらいかかりましたね。ダバとショウ(役の声優さん)が探してくれたという(笑)。「トッドいねーかー?」と。

――ダバ役の声優さんは現役なんですか?昔のエルガイムのときよりもカッコ良くなってますよね。

寺田:舞台の方で活躍されているらしいですよ。『第4次スーパーロボット大戦S』のときはちょっとおっさんクサイかなと思ったんですが。今回は若さがあふれてますよね。

――収録のときは映像を観ていただくんですか?

阪田:思い出していただくんです。実際には、ほとんどは書き下ろしの新セリフなんですけどね。

――掛け合いとかは一緒に収録されてるんですか?

阪田:ドモンと師匠は一緒なんですが、チャムとショウは別です。コン・バトラーのDVEとか全員一緒にいるように聞こえますけど、録音は全員バラバラなんです(笑)。同時にしゃべるシーンとか長いセリフなんかは一緒に録りましたね。

――プログラム的に声の容量というのは?

庄:多かったですね。最初は入るかな?と計算してみたんですが、かなり多い。最終的にはなんとかギリギリ納まりましたね。

――今回は何人ぐらい?

寺田:声優さんが120人ぐらい。キャラは250人以上。

――元の声と違う声優さんというのは?

阪田:赤い三騎士の方ですね。黒い三連星はマッシュの声というのが実際はないので、違うといえば違うんですが(笑)。

寺田:オリジナルもないので(笑)。

阪田:初めて声が出たという。

寺田:阪田さんの方から代役は極力…というか、やりたくないと言われていて、声優さんのいない人は出てないですね。ガラリアとかは声優さんが見つからなかったので出てないんです。あれだけ人数がいると、もう完全に普通の人に戻っている方もかなりいらっしゃいましたね(笑)。

――では、今回出ている人は現役の人だけですか?

寺田:引き戻した人もかなりいますね。上田みゆき(南原ちずる役)さんなんか主婦をされてますね。まぁ、企画の当初からダンバインやエルガイムの声優さんは、そこでやめられている方が多いので不安はありました。シーラ姫やエレ様も最初はいなかったんです。キャラも多いので切りましょうとか話してたんですよ。それがいつの間にか「野沢雅子さんを呼んでほしいんですけど」とか言われて、はぁ?!と(笑)。…ロペットですか?「はいそうです」。でも、それだけじゃあんまりなんでオレアナも出しましょうと。それで「大将軍ガルーダの悲劇」が生まれたという(笑)。

――とにかく豪華な声優陣ですよね。

寺田:もう予算のことを途中で考えなくなりましたね。そこまでやるっていうんでしたら、やるしかないでしょうと。野沢雅子さんの件も来たなぁ、と(笑)。あしゅら男爵も、ブロッケン伯爵もそうですね。

――声優さんがとまどったりしませんか?

寺田:古い方は意外と「懐かしいね」とか言いながら楽しそうにやってくださいましたね。

――声は結局どのくらいの容量なんですか?

庄:メガバイトで言うと320メガ強ですね。CDには基本的に560メガバイトくらい入るんです。だから、ほとんどがムービーと音声データですね。プログラムは少しなんです。なかなかCDロムを使い切るソフトというのも珍しいですね。

――一言モードの内容は阪田さんが考えられているんですか?

阪田:そうです。初めはつける予定はなかったんですよ。だから、最初の頃に収録した声優さんのキャラクター分はほとんどないんです。途中でふと「ああ、これをつけた方がいいだろうな」と思いついてしまいまして(笑)。

寺田:DVEシステムもあとから思いついているんですよ。で、『第4次S』のときに収録したアムロとか甲児とかはDVEがないんですね。今回はシャインスパークのときに「ゲッター・シャイン」て言いますよね。あれ実は『第4次S』のときに録ってあったんです。他にも「マッハウイング!」とかいっぱい録ったんですよ。なんかに使ってくれるといいなぁと思って(笑)。さらにゲームを終わったときのセリフとかも録るようになって、どんどんセリフが増えていく。絶対ゲームで使わないなぁというセリフも録るようになっていって、それが一言モードに使われてるんですよ。

――だからアムロがあんまりなくて、カミーユは妙にたくさんあるんですね。

阪田:そうです。

――あれは完全にランダムなんですか?

庄:数を決めてランダムに出してます。

寺田:『完結編』ではイデオンのキャラクターたちがいいセリフをしゃべるのでお楽しみに。

――そういえば、ビルギットさんはコスモ(イデオンのユウキ=コスモ。声は塩屋翼さん)が出るから出るようになったんですか?

寺田・阪田:そうですね(笑)。

阪田:そういうのが結構ありますよ。あの声優さんで、あの方がいるんだったらあれもできる、あれも出せると。

寺田:だから今回ひとり一役の方というのがほとんどいませんね。

――敵の兵士とか?

寺田:敵の兵士は今回阪田さんの方から特に要望がありまして、いわゆる往年サンライズロボット物で、必ず脇役で出てくる人シリーズという(笑)。

――二又一成さんとか?

寺田・阪田:そうですね。

阪田:佐藤正治さんとかね。

寺田:島田敏さんとか(笑)。

ロボット軍団はどこから来る?

――今回の他の登場するロボットの候補というのはあったんでしょうか?

阪田:色々ありましたが、ちょっとやばい話ですね(笑)。

寺田:まぁ、○イト○インとか、○イジ○オーとか考えてましたね。そろそろロボットネタが尽きてきたんで、新しいものも入れていこうというのがあったんですけどね。「イデオン」は昔から考えていたんですが、ストーリーが使いにくいかな、と。「トップをねらえ!」も同様で、前から考えてました。よく見たらこれって版権に「バンダイ」って入っているじゃんと(笑)。同じバンダイグループだから使わせてくれよぅと。ただ、演出とかスケールのでかさに難があるかなとは思いましたけどね。

――トップなんかは、少しマイナーな印象がありますが、どうなんでしょうか?

阪田:OVAですからね。

――まぁ、廉価版LDも出ましたが。

寺田:ザンボットのLDもタイミングが良かったんですが「出ねぇとはどういうことだ」と、ある人に言われました(笑)。「がっかりだよ」とか言われましたね。

――やはり売れ行きとか違うんですかね?

寺田:ロボット大戦に出てて物理的に観られないものってダイターンとダイモスぐらいで、あとは大体LDになってるんですよ。

阪田:初代ガンダムは除いてね。

寺田:そうですね。まぁ、ガンダムも劇場版は観られますしね。ザンボットの全話LDも出たばかりですし、ダイモスもそのうち出るんじゃないかと。ダンガードAとかも出てるんですよね(笑)。

――「メカンダーロボ」とか(インタビュー直前に全話LDが発売になった)(笑)。

寺田:メカンダーロボ買っちゃいました(笑)。

――あんまり売れなくて困ってるらしいですよ。

阪田:しまった、買えばよかった(笑)。

――今回ユニットでΖガンダムとか後半は苦しくなっている印象があるんですが。

阪田:まぁ、MSというのは世代的に強さの順というのがありますから、その枠はあんまり超えられないんですね。ただ、一応救済策はいくつか考えてはいるんですが、どうするかはまだ決まっていないんですよ。初代ガンダムはどうしようもないんですけど。

――1、2面出て終わりという。

阪田:個人的には好きなんですけどね。いくら好きだからと言っても強くはできませんからね。

――ハイパーハンマーがいいんですよね(笑)。

寺田:『Gガンダム』を除けば歴代ガンダムの中で唯一有効な近接武器を持ってますからね(笑)。

――トゲトゲの鉄球で相手を殴りますからね。

寺田:男の武器ですね。

精神コマンド「自爆」

――精神コマンドは幸運が2つに分かれましたね?

阪田:精神コマンドというのは最初にネーミングありきというのが多いんですよ。で、今回は「トップをねらえ!」の連中が出てくるんで努力はいるだろうと(笑)。じゃあ努力って何だろうな…うーん、経験値が2倍。でもそれは幸運がある。じゃあ幸運は使え過ぎるから分けよう。という流れなんですね。

寺田:こう言うと奇跡を持っているんじゃないかとか邪推をされそうですが、それは見てのお楽しみです。あと阪田さんがよくおっしゃるんですけど、精神コマンドは使い勝手じゃなくて、そのパイロットが持ってそうなものが入るんですよ。だから「なんで、このパイロットがこんな精神コマンド持っているんだ?」ってときはそういう性格だからなんですよ。

――アスカが挑発を持っているのとか。

阪田:そうですね。もう使い勝手よりも性格で6つあるうちの3つは決まってしまいますから、残り3つはできるだけ使い勝手とか考えて持たせるようにしてますけどね。

寺田:Wガンダムの連中が全員自爆を持っているのはお約束でしょうという奴ですね。

――自爆は自爆をする人っていうことで持ってるんですね。

寺田:まぁ、いわゆる自分の体を犠牲にして原作で死んじゃった人が割と、まぁ、ボスを除くんですが。ボスは何で自爆持っているのか、よく分からないんですよ(笑)。

阪田:いや、あれはお笑い(笑)。本当は自爆はお笑い的な感じだったんですよ。バーニィは特攻的な感じだったんで持たせましたが、ボスのは完全にお笑いです。ボスは安いですから。

寺田:10円ですからね(笑)。

気になるエヴァと新システム

――今回はデモが多いですね。

寺田:最初は映像取り込みなら音を入れるだけだから楽だと言っていたんです。でも、完璧に合わせ過ぎて何処からどう見てもLDから取り込んだとしか思えない。マジンガーの走る音とかが微妙に違うんですけど、気にせずにそのまま見たら苦労して音を入れてる所がわからず、報われない。

阪田:報われてるんですが、報われないという奴ですね(笑)。予告の「トップ」なんかも音楽はかなり凝ってますし、効果音もがんばってそっくりに作った。声もビデオのタイミングに合わせてアフレコしてもらったんですよ。本当にLDからそのまま録ってきたようにしか見えないんですね。ちなみにオペレーターの声まで同じですからね。「あ、この声は辻谷さんだ」と思ったんで、ちょうど辻谷さんが――

寺田:――シーブックの役でいたんですね。あれも全員別録りなんですよ。艦長もオペレーターもコーチもノリコも。

――曲のセレクトは監督が?

阪田:そうですね。今回彼(寺田氏)の方から絶対入れてくれと言われたのがひとつだけありましたね。「F-91」の曲だけは入れてくれと。

寺田:そしたら代償として「コスモスに君と」が入っているという(笑)。やっぱりあの曲を聴きながら発動したいっすよとか言われて、なんのこっちゃと(笑)。

――あ、そういう取引があったんですね。

寺田:今回はこれだけって曲のリストをわっと見せられて気絶しそうになりました。一体幾らかかると思ってるんやー!でも「F-91」入れてね(笑)。

――イデオンとかGガンダム3曲入ってますね。

寺田:実は他にもあるんですが、それサウンドテストに入れちゃうとネタがばれてしまうので避けてます。あと、クラシックを入れてくれと言われるとは思いませんでしたね。

――今回エヴァンゲリオンを登場させるさいに庵野監督にエヴァが宇宙で使えるかどうかを確認したという話ですが?

寺田:まぁ、映画を観てくれという話だったんですけど…観てみたら、うーん、再現が非常に難しいな、と(笑)。ロンギヌスの槍が刺さらないと空を飛べないということですか?と思ったんですけど「ウルトラマンみたいなものなので、空も飛びます」といっておられましたね。

――迎撃都市が第2新東京市なのは何故ですか?

阪田:セカンドインパクトがないからですね。原作ではセカンドインパクトで南極が溶け、首都が水没したので、第2の首都ができ、さらに使徒迎撃用の第3ができますからね。

寺田:この世界では南極がないとまずいんですよ。

寺田・阪田:南極条約とか南極事件とか(笑)。

――今回エヴァが強い印象がありますが?

阪田:うーん、強そうに見えて実は使いづらいですね。そういう印象があったんですよ。暴走されたら扱いづらいだろうなとか、そこら辺の不安定さを出そうと思って色々といじくりました。

庄:プログラム的にはアンビリカルケーブルとかがてこずりましたね。ATフィールドなど他のは、今まで変わらないので問題なかったですね。

―― 新システムはマニュアルでも1ページ取ってますからね。

寺田:本当はあそこにイデオンも入ってたんですけどね…(笑)。イデオンもシステムがよく決まってなくて、「ゲージが光ったら気をつけよう」としか書いてなかった(笑)。確認すると確かにそうとしか言いようがないという(笑)。

―― イデのシステムはプログラム的にはどうですか?

庄:大きくどうこうというのはないですが、かなり強力なんでバランス調整が難しいかな、と。まぁ、プログラム的にはエヴァほど難しくないと思いますね。

阪田:イデオンの方はまだ詳しく決めていません。いろいろ計算式を作って試してはいるんですが、あとはゲーム中のバランス調整をしてからでないと。

―― やられないロボットという印象ですが。

阪田:まぁ、最後にやられてはいるんですが、ちょこちょことダメージは受けたりしてるんですけど、ピンチになると勝手に動いたりするんですね。

寺田:イデオンって結構バコバコ火を吹いてますよ。私の印象はよく壊れるロボットだなと。でかいんで目立ってないんですけど腕もぎ取られたりしてるんですけどね。

―― まぁ、予備パーツが3体分あるとかいう話でしたからね(笑)。ゲージというのはどこに出るんですか?

阪田:基本的にはステータス画面のところですね。あと大きな変化がある時は画面にバーンと出ます。そこにルゥの泣き声が……。

―― これもちゃんと声優さんが。

寺田:井上瑤さんですね。

阪田:シェリル(イデオン)さんとか、レイカ(ダイターン3)の人ですね。とにかく声優さんが出ていると逆にどんなキャラクターが出てくるか、詳しい人は分かるんですね。昔のキャラが多いですが。

寺田:阪田さん声優の趣味が古いんですよ。「熱血主人公」と聞いて難波圭一(熱血主人公ジェスの声優)もって来るあたり…うーん10年前ですね。普通は緑川光さんとかもってくるんですが、なぜか野郎の方の主人公はちょっと古めですね。だから今回のメンバーがいれば「タッチ」ができます(笑)。

―― なるほど(笑)。

寺田:「タッチ」ができるとか「聖闘士聖矢」ができるとか、もう、わけが分かんないですね(笑)。

阪田シナリオ術の秘密

―― ストーリーを考えるポイントは?

阪田:うーん、これはまず最初にイベントありきなんです。こういうのをやりたい、またはやってほしいだろうなというのをまず考えて、実現するためにはどうしたらいいかを考える。まず結論ありきで、次にどうするかを考えるんですね。

―― 今回はイベントが多いですね。

阪田:そうですね。これぐらい詰め込まないと色んなストーリーを消化できないんですね。そのキャラクターが、そのキャラクターであるというエピソードがどうしてもありますから、それは外せない。

寺田:ロンド=ベルの人間をネルフに行かすには、先に使徒に接触してないといけない。そうじゃないのにネルフ本部に「チワッス」とか言って行くわけないじゃないですか、そうやってはまっていくんですね。ヒイロを出す場合はリリーナよりも先にロンド=ベルと接触させておくとか、いわゆる原作の目的のすり替えとか調整の試行錯誤ですね。見ると、うまいことやっているんですが、阪田さんは使徒を出すのに半年ぐらいうなってましたからね(笑)。

―― で、シュウが出てきて「使徒」です、と。

寺田:究極の裏技ですよね。わけの分からないところはオリジナルキャラで。ただ私は最初からシュウとゲンドウは絶対に知り合いだと思ってました。

阪田:ハッハッハ。あと今回はウイング系の接着剤としてギリアムとか使ってますからね。どうしても接着剤がないとオリジナルキャラの出番ですね。

―― ズレをオリジナルで補正していくと。

阪田:ええ。

―― 今回はガンダムWとエヴァがひっぱりますか?

阪田:そうですね。エヴァの話はそんなにないと思うんですよ。ウイングに関してはもともとガンダムの世界観なのでハマリやすいんですよ。今までと違う方向に話を持っていこうとした場合、ウイングにからめるのが一番やりやすかったんです。

寺田:ガンダムであってガンダムでない独特の世界観を持っているのでロボット大戦とシンクロしやすいんでしょうね。あと、トレーズがよくしゃべるのは阪田さんの代弁ですね。阪田さんはトレーズを気に入ってよく使うと読んでたんですが、案の定後半は出番が多い(笑)。

気になる完結編について

―― 『完結編』の内容の方は?

寺田:『完結編』の内容に関しては、もう、この方(阪田)の頭の中にしか入ってないので(笑)。

―― 後半はどうなんでしょう?

阪田:まぁ、伏線らしい物はちょこちょこと、まあ、伏線だと気付かれたら伏線ではないので、らしき物を張ってあります。

―― 『完結編』ではパラメーターが変わるんですか?

阪田:味方はほとんど変わりませんが、敵は全体的にいじりますよ。もちろんイベント的にそれを示したものもありますよ。

寺田:改造も10段階になるんで、ちょっとずつですけどパワーアップしますしね。

―― 5段階から10段階に変わるのは前後編に分かれたからですか?

阪田:これは元々こういう予定だったんですよ。最初から10段階にしておくといきなり強くなり過ぎちゃうんで。あんまり始めからレベルとか上げ過ぎるとゲームとして面白くなくなってしまうんで、まぁある程度無敵の感覚が楽しめるレベルぐらいになるようにしています。だから改造に関してはそれぐらいのハンデをつけてもいいかなぁという判断ですね。

―― 阪田さんは何か脚本の勉強はされているのでしょうか?オリジナルのセリフを生かしながら、いつもいいシナリオを作られてますが。

阪田:いや、完全な独学ですね。だから毎回反省することしきりなんですよ。

寺田:みんな阪田さんにだまされてるんですよ(笑)。原作のエピソードで巧みにオリジナル世界に引き込まれていくんです。万丈もカミーユもロボット大戦のフィルターがかかっている。だからこの世界ではATフィールドがブレストファイヤーで破れると理解できる。ほんとは超電磁スピンでATフィールドが破られるかどうかわからないじゃないですか。一応庵野監督は高出力のエネルギーなら破れるとおっしゃってましたが。

―― そういえば量産型エヴァは出ないんですか?

寺田:出ません。版権が変わってしまうので。量産型が出てもややこしいだろうし、だいいち阪田さんがまだ映画を観ていない。ガイナックスさんの方も「映画と違うエヴァを見せてください」と。今回ゲッターとマジンガーが戦う話がありますよね。一応主役同士なんでダイナミックプロさんにお伺いをたてに行ったんですが「信用してますから、お任せします」と。本当に各版権元さんには御理解いただいてます。

――トップではエルトリウムとかは出るんですか?

寺田:出ないです。宇宙怪獣も出ませんね。宇宙の巨神は出ますけどね(笑)。

――バスターホームランとかは?

阪田:秘密です(笑)。ユニットの特色を出したいので、イデオンはマップ兵器系、ガンバスターは真ゲッターみたいな感じですね。

――バッフ=クランの巨大メカはどうでしょう?

寺田:ガンド=ロワとかバイラル=ジンとか出ないのかという話もありますが、あれもでませんね。結局メカが全部出てる番組と言うのもないですからね。Ζガンダムがほとんど出てるぐらいですかね。

――以前の発表ではマジンカイザーとスーパーマジンガーが選べるというのがありましたが?

阪田:うーん、今までけっこう発表したことでもギリギリになるまで分からないんですよ。でも現段階では選択できるようになっています。

寺田:カラオケが入らないということだったんですが、直前で入った例もありますし、私も自分の目で見るまではわからないということにしました(笑)。

――『完結編』の発売はいつごろでしょうか?

阪田:まぁ、冬ですね。

――私の冬は12月から2月なんですが。

阪田:世間一般の冬とそう変わらない冬です。まぁ、来年の冬というところで。『F』ではかなり色々な部分を抑えていましたから、分岐なども増えますよ。

寺田:『F』で溜まっていたストレスを一気に解消できますよ。マップ兵器とか色々制限していた要素もありますんで。始まるとすぐにΖΖガンダムとかF-91とか皆さんお待ち兼ねの強者どもが登場しますからね。

阪田:『F』から『完結編』のネタも振ってありますから、それを忘れずに待っていて下さい。

――私も『F』で遊び続けて待ってます。今日はお忙しいところありがとうございました。