妖獣ベヒーモス

ベヒーモス【出身地:イスラエル】

 バハムートとも。『ヨブ記』に記載される河馬。元来は巨大な魚を意味する言葉だったようだが、のちに悪魔とみなされるようになった。

 その姿があまりにも巨大なため、一頭なのに複数形に数えられたか「巨大な獣たち」を意味する名である。一説ではインドのガネーシャ神が西方に伝わった姿とも言われる。中世ヨーロッパの悪魔学では闇を司り、暴飲暴食を誘う者とされ、完全に悪魔としての地位を固めている。地上のベヒーモスに対して、海のリヴァイアサンが魔界の二大巨獣である。

妖獣フェンリル

フェンリル【出身地:北欧】

 魔王ロキの息子で、地を揺るがす者という意味の巨大な狼。

 成長を続けるこの怪物が太陽を呑むだろうという予言があり、魔法の紐で拘束される。ラグナロクでは地割れを起こし、主神オーディンを呑み込む。

妖獣カトブレパス

カトブレパス【出身地:エチオピア】

 水辺に棲む、動きの緩慢な怪物。その身体は水牛、あるいはカバのようだと伝えられる。

 ナイル川の源泉とされる泉の近くに、このカトブレパスは棲むと伝えられる。手足の動きは鈍く、頭は重過ぎるために地面の上に垂れている。とうてい怪物らしくない純重な姿をしているが、その目には恐ろしい力を秘めている。カトブレパスの眼に視線を合わせた者は、たちまち死んでしまうのである。

妖獣ギュウキ

ギュウキ【出身地:日本】

 牛鬼。頭が牛で、首から下は鬼の姿をしているものが一般的だが、有名な絵では胴体が蜘蛛のような化け物で、八本の足があり、角も八つある。

 牛鬼は海に棲んでおり、ときおり海岸に現れ、浜にいた人間を襲って喰らう。牛鬼が棲んでいる淵は「牛鬼淵」と呼ばれ、各地でそこが祭祀の対象になっている。これにより牛鬼の霊を慰め、害を無くそうというのだ。愛知県の宇和島では特に有名であり、家々を巨大な牛鬼の人形が訪れ、病魔を背負って海に流される。

妖獣フォービ

フォービ【出身地:旧ユーゴスラビア】

 火を吹いては野山や街を荒らすとされる獣。原因不明の火事は、この獣の仕業と言われる。

 火の気のないところに起こる火事は、現在なら自然発火とされる。しかし昔のこの地方にあっては、それはフォービが怒りを表すために起こすものとされた。そしてこのような火事が起こったなら、すぐさまフォービの祠に生贄の牛や羊を捧げないといけない。笑ったりしようものなら、たちまちその者の家に火がつくことになる。

妖獣アツユ

アツユ【出身地:中国】

 中国の少咸山に棲むという人喰いの妖獣。

 赤ん坊の泣き声を真似て人を誘う。赤い牛のような体躯に、蹄は馬と同じくひとつである。それに人の顔が付いている。

妖獣バイコーン

バイコーン【出身地:イギリス】

 ユニコーンは一本の角を持ち、純潔を象徴する聖獣であるが、二本の角を持つバイコーンは邪悪な存在として姦淫を象徴する淫獣である。

 純性である1の数に対して2は女性を表す誘惑の数字としてとらえられる。元来ユニコーンの角が男根を表しているのだが、処女のみがユニコーンを鎮められるとして、精神的な愛と肉体的な愛の理想的な結合を意味してきた。しかしバイコーンはこの図式を壊し、歪んだ性欲の表現として存在するのである。

妖獣ワイラ

ワイラ【出身地:日本】

 山の中に棲んでいる正体不明の妖怪。鉤状の爪で土を掘り返し、小動物を食べるとされる。

 ワイラは巨大な牛、あるいはサイのような身体を持った妖怪とされる。山の中に棲み、平地には降りてこない。這うようにして地面を歩き、一本の鉤のような爪の生えた前足で土を掘り返しては、出てきたモグラなどを食するという。ワイラには雄と雌があり、身体の色で見分けることができるという。雄は土色、雌は赤色であるという。

妖獣ガルム

ガルム【出身地:北欧】

 死者の国、ニヴルヘイムの入り口を監視している犬で、冥府の女王ヘルの猟犬たちである。真っ黒な剛毛の胸元を死者の血で深紅に染めている。その両目は石炭のように燃えるが、四つ目でもあるとも言われる。

 死者たちが逃げ出さないように見張っており、脱走者には容赦なく襲いかかり、貪り喰う。切れることのない鎖につながれ、この鎖からガルムが解き放たれるのは神々の最終戦争、すなわちラグナロクのときであるという。