世界樹イグドラシルのこずえにいる、「死者を飲み込む者」と呼ばれる巨鷲。巨人族の末裔で、いつも空から下界を見下ろしているために、多くの出来事を知っているという。
邪龍ニーズホッグとは大変仲が悪く、死者の分配を巡っていつも喧嘩ばかりしている。ラグナロクでは参戦することなく、次々とイグドラシルへ送られてくる死者の魂をニーズホッグと奪い合い、ただただ喰らい尽くすという。
太陽の中に棲むとされる鳥。その足は3本である。漢字では「火鳥」と書く。
太古の中国には10個の太陽があり、1個づつ順に天空を旅していた。しかしあるとき10個の太陽が一度に空に現れ、地上は灼熱の焦土となった。これをゲイという男が9個まで弓で射落とした。彼が射たのは太陽に棲むカウに他ならなかった。太陽は1つとなったが、10個であった頃の名残は、十干十二支の十干や、10日を一旬とする魔法にみることができる。
メソポタミア、シュメール文明の、獅子の頭を持つ嵐を呼ぶ怪鳥。ズーとも言う。人間よりひときわ大きく、高い山や木に好んで巣を作る。
アンズーは元々神殿などを守護していた霊鳥であった。しかし神々の王になりたいという欲望から、シュメールの大地と大気を司る主神エンリルより『トゥプシマティ』という書版を奪い、そのまま王権を確立させようとした。この粘土版には天の法が記されてあり、これを手にした者は万物を支配する呪文を唱えることができ、真の世界の支配者となるのだ。アンズーを恐れた他の神々は、ニンギルスという狩猟と戦争の神に運命を託した。
苦戦したニンギルスだが、四方からの風の攻撃によってアンズーは翼を折られ、地に落ちたところで捕まってしまう。アンズーは『トゥプシマティ』を奪い取られたあげく、そのままニンギルスの神殿の守護獣にさせられたのだった。
スリランカの鷲の魔物。グルル・ヤクシャと呼ばれ、ラクシャーサの一種とされるが、これはインドの霊鳥ガルーダの変形である。
スリランカはインドにとって悪鬼ラクシャーサの住む島とされた。しかしスリランカではインドにこそラクシャーサの住む世界があると考えられたのだ。よってヒンドゥーの神々は、仏教を信仰するシンハラ族の人々にとって、それこそ悪鬼羅刹と映ったのである。
死んだ少女の霊がなるという「悪しき鳥」。美しい娘の姿でも現れる。
少女が愛を知らずに死ぬと、このモー・ショボーになると言われる。鳥の姿を取るが、長い髪と尖った赤い唇を持つ美しい娘に化けることもできた。モー・ショボーは旅人を誘惑する。しかしその美しい姿に騙されてはいけない。旅人が隙を見せると、彼女は赤い唇をくちばしに戻す。そして旅人の頭に穴をあけ、脳みそを啜るのである。
地獄に棲むハーピーの呼び名である。ローマ神話でフリアイ、ギリシア神話ではエリュニスと呼ばれる。フリアイは3人いるとされ、それぞれアレクト(無慈悲)、ティシポネー(血の復讐者)、メガイラ(闘争)の名を持つ。彼女たちは復讐を司る女神であり、真鍮の翼と爪を使い、神々の怒りにふれた者たちを苦しめる。
フリアイは罪人たちを殺すことはなかったが、責めの手を休めることもなかった。人々は彼女らに畏怖の念を込めエウメニデス(情け深い者たち)と呼び、決してフリアイとは言わなかった。それが彼女らが決して殺生をしないことによるものか、死して地獄に落ちた時にフリアイの不興を買わないためかは定かではない。
頭部の異常に大きな耳を翼にして闇夜を飛びまわる異様な怪物。名前の由来はその鳴き声による。強い魔力を持ち、人々を惑わすという。
もともと悪質な呪術師が死んで死霊となったものと言われる。月の出ていない暗闇をもっとも好み、真暗闇を歩く人間に襲いかかるのである。チョンチョンの餌食になった死体には、首から上が見当たらない。そう、その無くなった頭は新たなチョンチョンと化し、その夜の内に闇の世界の住人となるからなのだ。