邪龍ティアマット

ティアマット【出身地:バビロニア】

 バビロニア原初の女。最初の地母神。蠍の尾を持った豊満な肉体、絶世の美女として想像される。

 塩水(海)を意味する巨大な神々の母であり、淡水を意味する巨神アプスーと交わり、多くの神々を生みだした。しかし神々の傍若無人な振る舞いに腹を立てて滅ぼすことを決意、自ら巨大な龍と化し、七頭の大蛇、龍、大獅子、嵐の悪魔などを引き連れて戦った。

 ティアマットは「大洪水を起こす龍」とも呼ばれ、戦いの場では毒をまき散らし、敵ばかりでなく味方までをも圧倒する鬼勁を発し、呪力でもって敵をなぎ払ったという。こうしたことからサタンの原形とも考えられている。結局マルドゥクの三又矛の前に敗れ、その身体から世界が創られた。まず身体を二つに引き裂かれ、天空と大地が、両目はチグリス・ユーフラテス川の源となり、唾液や口の泡から雲が、砕かれた頭からは山が生まれた。

邪龍ラハブ

ラハブ【出身地:イスラエル】

 ユダヤの海龍であり、全身水でできている。『旧約聖書』の『ヨブ記』に登場し、ヤハウェと戦って頭を割られ、身体を刺し貫かれて死んだ。名の意味は「凶悪」「嵐」などで、ユダヤの民が敵対するエジプトを呼ぶときの名でもあった。

 ユダヤの伝承では、神は天地を創造するにあたって、まず水でできたラハブの身体を二つに引き裂いて上下に分け、天と地に与えたという。天に与えられたラハブの身体は雨や雪などに、地の方は海や川などになった。この水はエデンの園に降る雨となったときに、アダムに「海の天使」の知恵を授けたという。またモーセが紅海を渡ったときに左右に別れた海の水も、ラハブが再び神に打たれたためという伝承がある。

邪龍キングー

キングー【出身地:バビロニア】

 バビロニアの神。ティアマットの二番目の夫である。

 最初の夫アスプーが息子である神々との戦いに敗れて殺されたあと、ティアマットはこのキングーを次の夫に選んだ。彼はティアマットから律法を刻んだ石版である『天命の書版』が与えられた。これにより神々すべてを支配する権利を与えられた。または月神ともされており、のちにシン(シナイ山の月の神)と呼ばれる月神として崇められた。砂漠の真っ只中にあるシナイ山の山頂に玉座を持ち、永らく鎮座していた。

 モーセはエジプトからユダヤの民を率いて砂漠をさまよい、シナイ山でヤハウェに出会い、『十戒の石版』を授かっている。ここでのヤハウェは、自分がシナイ山の神であると名乗っているところに注目したい。モーセに渡された石版は、あのバビロニアの『天命の書版』であったのかもしれない。

邪龍ファフニール

ファフニール【出身地:ドイツ】

 ゲルマン神話の英雄、ジークフリートに倒された龍。ラインの黄金を守るために、龍と化した魔導師の姿である。

 その血を浴びると不死となる。ジークフリートも血を浴びたが、首に木の葉が付いており、そこが唯一の急所となった。

邪龍ニーズホッグ

ニーズホッグ【出身地:北欧】

 北欧ゲルマン神話におけるもっとも邪悪な存在。黒い飛龍であり、怒りに燃えてとぐろを巻く者、あざ笑う殺人者、恐るべき咬む者とも呼ばれ、世界全体を支えているイグドラシルというトネリコの大樹の根の一本に咬みつき、世界の滋養を奪い、世界に暗い影を及ぼしている。そして世界の終末ラグナロクの日には、イグドラシル全体を倒してしまうとされる。

 ニーズホッグは霧深きニフルヘイムに湧き出ているフヴェルゲルミルの泉より沸き立つ、有毒の熱泉の底に潜んでいる。イグドラシルの根の滋養だけでは飽きたらず、死者を喰らい、その血を啜るものとされる。『エッダ』には世界が終末を迎えたあとに新しく生まれ変わる世界で、閃光を放ちながら死者を乗せて舞い上がり、広野の上を飛び、やがて沈むと歌われている。

邪龍タラスク

タラスク【出身地:フランス】

 南フランスのタラスコンに住むドラゴン。背はガメラの様なトゲのある甲羅で、六本の足があり、尾は長く、先がスペード型に尖っている。頭部はライオンようで、毒ガスの息を吐いて人獣を殺し、さらに糞は空気に触れると炎を上げて敵を焼くというのだ。好きなことは子供を喰らうのと、若い娘を強姦することである。

 キリスト教の説話集『黄金伝説』では、聖女マルタが十字架と聖水でもって弱らせたあと、自分のガードルで捕らえた。水から引きずり出されたタラスクは、村人総出で滅多打ちにされて殺されたと言われる。こうした主の力を目の当たりにしたタラスコンの人々は、キリスト教に改宗し、近隣の人々もそれにならったという。

邪龍ワイアーム

ワイアーム【出身地:西欧諸国】

 飛竜の一種。長い胴体をくねらせながら空を飛ぶ。手足がないため、水上に着水する。泳ぎは蛇のように得意である。知能は低く、獣並と言える。

邪龍ゾォン・ドゥー

ゾォン・ドゥー【出身地:ベトナム】

 ベトナムの奥地に実在する邪龍。2003年『藤岡弘、探険隊  ベトナム奥地ラオス国境密林地帯に、呪われた竜の使い人喰いヅォン・ドゥーは実在した!』にて、日本のお茶の間に衝撃的なデビューを果たした。

 探険中、数々のアクシデントに見まわれた藤岡弘、探検隊であったが、クイ兄弟やチャリオといった協力者のアシストもあり、激闘の末ゾォン・ドゥーは捕獲された。番組自体は「日付以外はすべて誤報」と言われる東スポと肩を並べるほどの胡散臭い内容ではあったものの、藤岡弘、隊長の熱演とあいまって、既存のレギュラー番組を遥かに超越する面白さであった。

 なおゾォン・ドゥー自体は番組のラスト数分しか映っておらず、また藤岡弘、隊長をはじめとする探険隊員の一挙手一投足があまりにも面白すぎたため、視聴者的にはゾォン・ドゥーそのものの印象は薄い。